2019/9/23にNataliya_Kuznechovさんが投稿された翻訳記事『遠征記録-1046』は、低品質な翻訳とみなされ、2021/4/18に削除されました。
以下は低品質な翻訳とみなした理由です。なお、こちらは報告者であるGipolibidemiaさんのコメントを使用させていただいています。
Т-8: トンネルの水平な壁、船の後方に回転する小さな球体が見える。遠目では眼球に似ているな。
Т-5: 遠目では?あぁ、子犬みたいに見えるよな!
「子犬」が誤りです。目、瞳などを意味するзенкиは露英辞書ではpupilなどと説明されているため、それをpuppyと見間違えたんだろうと思われます。
…レは!俺たちが居座ってたクソッタレは、胃を空っぽにするためのクソッタレなケツの穴だったんだ!俺たちはその下にある深部の足に引っかかってブラ下がってる!
「その下にある深部の足」が日本語として通じていないように感じます。
最初の「…レは!」も誤りかもしれません。原語では…ать!となっています。атьの3文字はロシア語の動詞の不定形の語尾によく見られる文字列で、必ずしも罵言とは断定し難いです。
原文: Предисловие:
元訳: はじめに:
Предисловие:はEN記事中にあるForeword:をRUに翻訳する際に定訳語として使われている語です。したがってForeword:をJPに輸入する際の通例に従うべきであり、「はじめに」は不適だと考えます。
原文: Полный отчёт о подготовке к экспедиции-1046 содержится в Документе-1046-███, для доступа к нему необходимо разрешение O5.
元訳: 遠征-1046の準備段階に関するレポ―トは、文書-1046-███に記述されており、アクセスにはO5の許可が必要です。
Полныйが無意味に訳抜けしていると思います。
「遠征-1046の準備段階に関するレポ―トの完全版は、」
原文: подготовленный корабль
元訳: 設置された探査船
корабльが調査船だったり探査船だったりと無意味に訳揺れしています。
原文: Лучи прожекторов
元訳: 探査ライトの光線
прожекторを露英辞書で引くとsearchlightと出てきますので、searchlightが普通に「サーチライト」という外来語として定着しているのを知らずに無理に訳そうとしたのではないかと推察します。
「探査ライト」とgoogle検索しても用例はでてこないため、日本語として自然な表現になっていない訳出、あるいは誤訳と考えます。
原文: что в этой камере условия схожи с условиями на поверхности, кроме более высокой температуры (██o C) и присутствия неустановленных химических соединений в воздухе.
元訳: 湿度が高いこと以外は地表の状態と一致していることを示している。 (██℃) 空気中に未知の化合物が存在していた。
температурыを「湿度」とは訳せないはずで、後ろから摂氏で補足されている点からも「温度」とすべきです。
また文構造が取れていないように感じます。「温度が高いこと」と「空気中に組成未特定の化合物が存在すること」以外は地表の状態と同じ、です。
文中に出てくる語順をできるだけ保って訳すなら「この空間は地表の状態と類似していますが、温度が非常に高い (██°C)という点、および空気中に組成不明の化合物が存在するという点において異なっています。」とかだと思います。
原文: в дальнем конце камеры видно круглое образование, похожее на [УДАЛЕНО],
元訳: 空間の隅には、変形された[削除済み]に似た円形の形状が見られる。
дальнемとあることと、この箇所に続く文からв дальнем концеは「空間の隅」ではなく「進行方向」くらいに訳すべきだと思います。
また「変形された」に相当する語が原文にないです。
「円形の形状」が重言になっています。
原文: База, идём вниз по тоннелю, приём.
元訳: 本部、トンネルを下った。どうぞ。
直後のT-7の発言に合わせて現在進行形のように訳出すべきだと思います。「トンネルを下っている」
原文: Тьфу, чем мы занимаемся… Едем по какой-то кишке…
元訳: うわ、俺達はどこを走ってるんだ…腸の中か…
「腸か何かを進んでるようだが…。」くらいだと思います。какой-тоの婉曲的なニュアンスが十分出せてないように思います。
原文: Ну, строго говоря, это пищевод.
元訳: ふむ、厳密に言えばこれは食堂ですね。
「食道」の誤字です。
原文: Прекратите не относящиеся к делу диалоги, немедленно.
元訳: 関係ない会話の記録を直ちに停止します。
Прекратитеが命令形になっているのが理解できていないように見えます。
「任務に無関係な発言はやめてください、今すぐにです。」
原文: Он, похоже, идёт дальше горизонтально.
元訳: 水平方向に動いているらしい。
このидётは動作じゃないと思います。「(水平方向に遠くまで)続いている」の意だと思います。
原文: Вдруг кислота какая, тут автоматами не поможешь.
元訳: 突然どんな酸が出てくるかわからんぞ。ここじゃ機械はおれたちを助けることもできないだろ。
この人たちは機動部隊ですしавтоматは普通に「銃」だと思います。
кислотаって単に「酸」と訳すだけだと説明不足だと感じますし「酸性の分泌物」とか補っていいと思います。
あとтутって英語のthenくらいの意味だと思います。
「いきなり酸性分泌物なんかが出てきたら、銃じゃ対処できないんだぞ」のような
原文: В горизонтальном тоннеле на стенах расположены небольшие шары с отверстиями, поворачиваются вслед за кораблём.
元訳: トンネルの水平な壁、船の後方に回転する小さな球体が見える。遠目では眼球に似ているな。
горизонтальном=「水平な」がかかる語が誤っています。
「見える」に対応する語が原文にありません。
またповорачиваются вслед за кораблёмの意味やかかる場所が取れていないように思います。
直後にこのнебольшие шары с отверстиямиを「眼球」と表現していることから、「穴」がまるで瞳みたいに船の方向を向き続けているということを言ってるんだと思います。
また上の方で「多孔質」云々言っていたのと対応させるため、このшарыが複数形であることを明示した方がいいのかなと思います。
「水平に続くトンネルの壁面に、穴の空いた小さい球体がたくさん付いている。それがこの船を追うかのようにギョロギョロ動いている。」
原文: Отдалённо?! Да самые натуральные зенки!
元訳: 遠目では?あぁ、子犬みたいに見えるよな!
先日の書き込みでお示しした通りです。
原文: Увеличьте… Вижу. Больше ничего необычного не заметили?
元訳: クリック、拡大…なるほど。なにか異常な現象には気が付きましたか?
「クリック」がどこから出てきたのか不明です。
またУвеличьтеは命令形であり、機動部隊に対してズーム撮影するよう要求しているものと思います。
「拡大してください…。なるほど、」
原文: Продолжаем движение.
元訳: 我々は常に動き続けています。
語調が妙に強いような気がします。
原文: О: Шестой, тишина в эфире.
Т-4: Нет, ну серьёзно, эти штуки на нас смотрят! Знаете, так в каком-то фильме было, там чувак…元訳: О: 6番、静かにしてください。
Т-4: いや、まぁ実のところ、あれは多分俺らを監視してる!映像で確認しただろうがな、あそこに…
в эфиреが抜けています。「放送中は」などが定訳ですがここでは「録画中は静かに」だと思います。
T-4がфильмеという表現を使っているのはこのв эфиреを踏まえたちょっとしたユーモアのように思われ、抜かしてはいけないと思います。
また形容詞каком-тоが抜けており、фильмеも誤訳していると思います(в каком-то фильмеを直訳すると「何らかの映画の中に」とかになります)。
結局「なあ、映画でもこういう展開あっただろ。あそこに男が…」とかになると思います。
原文: Это не тебя…
元訳: あんたには言ってねえよ…
原文ではT-4がこの文の述語までしっかり言い切る前にこの後のT-7の発言が割り込んでいるように見えます。
「あんたに言ってるわけじゃ…」とか適当なところでブツ切りした方がいいのかなと感じます。
原文: Спустя 97 минут в эфире на прежней частоте раздаются помехи,
元訳: 規定周波数で97分の検出の後、ノイズが検出され、
「97分後、当初の周波数においてノイズが検出され」
原文: О: (略) Докладывайте, что там у вас!
Т-2: Хрень у нас!元訳: 見えるものを報告してください!
Т-2: よかった!
「(あなた方が置かれている)状況を報告してください!」
「そりゃもう(我々がおかれているのは)ひどい(状況だ)よ!」とか
通信が確立して安堵してるというような会話じゃない気がします。
原文: хорошо хоть, герметичность не нарушена.
元訳: だが、整合性が損なわれるほどじゃない。
герметичностьを「気密性・密封性」等の定訳から外す理由がないと思います。
原文: плюс по левому борту все прожекторы - вдребезги, а передний заклинило.
元訳: さらに左舷の照明機器が破損、前方に詰まっているようだ。
по левому борту(左舷では) все прожекторы(すべてのサーチライトが) вдребезги(ひどく損壊している)
а(加えて) передний(前方の(サーチライト)も) заклинило(何かが押し込まれて潰れてしまった、圧壊してしまった、など)
で、
- переднийが形容詞であるはずが副詞的に取られている
- その被修飾語である(サーチライト)の省略が適切に取れていない
という問題点があります。
原文: В обшивке вмятины дай боже, мы тут на честном слове держимся!
元訳: 外装は凹んでいて、どうやら俺たちは神の禁忌から仮釈放を受けたらしい。
дай божеが感嘆詞、мы держимся на честном словеが「やっと持ちこたえている」くらいの慣用表現です。いずれも改訂新版 博友社ロシア語辞典に従っています。
原文: Эта тварь, она нас, походу, того - сглотнула…
元訳: この怪物、こいつが、俺ら、この戦闘は、その、飲み込まれたんだ。
походуは「〜らしい」というような意味の副詞ですが、名詞походと誤認しているように見えます。
原文: В каком состоянии реактор, другие системы? Вы вообще можете двигаться?
元訳: 原子炉や、他のシステムの状態はどうでしょう?移動は可能ですか?
この探査船の動力源が原子力であるとは明示されておらず「原子」が蛇足です。
原文: Мать моя женщина, что за хрень?!
元訳: あたりまえだろ、一体何なんだ!?
前後の文脈からして「あたりまえだろ」は誤訳で、ただ驚きを表現しているだけだと思います。
原文: Под нами пропасть, зацепились лапами и висим!
元訳: 俺たちはその下にある深部の足に引っかかってブラ下がってる!
「俺たちの下に穴が空いてる。手でしがみついてなんとか耐えてる」とかだと思います。
намиが適切に一人称として取れていないと思われるのとカンマ前後のつながりを取り違えているのではないかと思います。
またлапамиの格を取り違えている?ように思われます。